多摩産材杉塔婆への想い
卒塔婆に使われる材料入手ルートの変遷
卒塔婆製造で全国シェア6割以上の東京都日の出町では、もともと地元の山で豊富に採れたもみの木を使い、卒塔婆を製造していました。地元の山のもみの木が採りつくされると今度は変わって、杉の木を植林しました。杉の木は色が濃いなどの理由により、卒塔婆の材料としては敬遠されたため、その後もみの木を求めて全国のあらゆる地域のもみの木を仕入れるようになりました。やがて、国内のもみの木も少なくなってくると、材料の仕入れは海外から行うようになり、現在では弊社も同業他社もほどんどが、中国、ヨーロッパ、カナダなど海外からの外材と呼ばれる材料で卒塔婆製造を行っています。
地元の山にはこんなに杉の木があるのに
東京都といっても、地元西多摩地域は非常に自然に恵まれ、山もあります。「卒塔婆屋さん」の工場は山に囲まれた谷間にあります。日々当たり前にこの山々に囲まれて仕事をしています。そんな状況で一つの疑問が湧いてきました。それは、これだけ周囲の山には杉の木があるのに、うちは何で外材を使っているのだろうか、なんで地元の木を使わないのだろうかというものです。それまでは会社において山の話題といえば、花粉が凄い、何処かでクマが出たなどあまり良いものではありませんでした。
杉で卒塔婆を作ってみようと思ったきっかけ
たまたま、別件で地元の製材業者の方と会う機会があり、もともとその業者でも外材をメインに扱っていました。しかし、周りに山がこれだけあるのに何で地元の木を使わないのだろかと思い、外材から多摩産材をメインに扱うようになったというお話を聴くことができました。私たちと同じ想いだったのです。
杉を使った卒塔婆は同業他社でも既に取り組んでいる所もあります。その製材業者さんも塔婆用に加工した板を同業他社へ卸している実績もあり、多摩産材の認証も受けていることから、「卒塔婆屋さん」でも仕入れて地元多摩産の杉を使った卒塔婆を製造することを決意しました。
杉塔婆を普及させるうえでのハードル
杉塔婆をはじめたからと言って、ただ単にサイト上に品揃えしたところで簡単に売れるものではありません。杉は外材に比べ、色味が均一でなく、赤みや黒みを帯びているものも多く、卒塔婆=白いという既成概念が根強くあるためです。確かに、100%地元多摩産材で卒塔婆を製造していくことは究極の理想ではあります。しかし、商売としてやっている以上、理想だけではなく、現実に向き合いお客様が望んでいる商品を提供することが当たり前なのです。会社が立ち行かなくなれば、理想も何もそもそも普及させることなどできなくなってしまいます。
杉塔婆普及にあたり、「卒塔婆屋さん」では丁寧に意図・経緯をお客様にお伝えし、共感して賛同していただけるよう、日々コツコツと情報を発信していきます。
多摩産材とは(秋川木材協同組合HPより抜粋)
東京都では、多摩産材認証協議会が定める制度により認証された木材を、多摩産材として認定しています。「多摩産材認証協議会」が、多摩地域で生育し、適正に管理された森林から生産された木材の産地を証明する制度です。平成18年4月からスタートし、当面は、森林所有者・素材生産業者・原木市場・製材業者を登録事業者としています。
対象となる森林は以下の通りです。
- 森林施業計画認定森林
- 東京都が実施する花粉症発生源対策事業の対象森林
- 東京都が実施する森林再生事業の対象森林
- 市町村が実施する日照権等事業の対象森林
- 公共工事の対象森林
認証材とは(秋川木材協同組合HPより抜粋)
対象となる森林から生産された木材で、生産から販売までの全ての流通工程で多摩産材認証登録事業者が扱う木材及び製材品をいいます。販売に際し、規定する証明書類とシールが添付された木材及 製材品です。
多摩産材のメリット
森林は私たちにさまざ様々な恵みを与えてくれます。私たちが生きるために必要な酸素を作り出し、二酸化炭素を吸収することで地球の温暖化防止にも役立ちます。精神面でも森林は安らぎを与えてくれます。
そんな森林をまも守り次世代へと持続していくためには、間伐や伐採、植林など森林を適切に整備し手入れをしていかなくてはなりません。
- 多摩産材を使用することで、そこで得て収益を森林の整備に還元することで、地域の環境を守るとうい循環型のシステムとして機能します。
- 地元の木を地元の業者で製材するので輸送距離が格段に短くなり、輸送時の車輛のCO2排出量も最小化でき、環境を守ることにつながります。
- 健全に管理された山は花粉も今ほど大量に飛散することもなくなります。花粉が飛散しにくい品種への切り替えも伐採後、新たに植林することで可能です。
- 林業が活性化することで、林業従事者の就労条件が改善され人手不足、若者の担い手不足を解消する一助となります。
「卒塔婆屋さん」の多摩産材杉塔婆は
「卒塔婆屋さん」で使用する多摩産材は認証を受けた業者から100%仕入れをします。製品配送時の梱包には認証シールを貼らせていただきます。
大都会といわれる、東京でも3分の1の面積は森林であり、東京西部の多摩地域から生産される木材『多摩産材』であり東京の木です。「卒塔婆屋さん」の杉塔婆は多摩産材の認証を受けた材木店から100%仕入れをします。
多摩地域で伐採された木材は、多摩木材センターにて地域の製材業者によって購入されます。
施業計画を経てマニュフェスト化し、多摩産材認証協議会にる管理のもと木材には認証書類が添付されます。
認証登録をした林業家から多摩木材センター→製材工場→出荷先と認証書類を添付しながらトレーサビリティを担保しています。
こちらのたまもくざいせ多摩木材センターは弊社の所在地と同じ日の出町大久野地区にあり、工場からも車で10分程度、製材業者さんも地元でこちらも車で10分程度の位置にあります。まさしく地場産で、地産地消です。
東京都では現在、花粉対策事業により、都が積極的に立木を買い付け、新たに植林をすることにより森林資源の循環化を促進し、花粉の少ない森づくりを推進しています。
地元の製材業者が買い付けした杉の丸太は、工場へ搬出し製材します。
工場に搬送された丸太の樹皮を剥きます。
製材工場で発生する樹皮や木屑はすべてバイオマスボイラーにて熱源として利用しおり、産業廃棄物ゼロです。
ツインバンドソーによる製材
自動送材車式帯鋸盤。短尺から長尺物、直径1m級の大系木まで製材できる万能的な製材機です。
製材した板材は、天然乾燥や人工乾燥にて乾燥し、出荷されます。乾燥機は製材会社保有3基、組合保有1基によって安定供給を可能にします。現在JAS造作材製材認定の申請を行っております。
製材された材料が弊社工場に入荷します。この後、通常の卒塔婆と同じ工程を経て卒塔婆が完成します。
完成した卒塔婆です。見てわかる通り、色が分かれていたり、黒かったり、赤かったりします。これが、杉の個性です。
しかし、見れば見る程味わい深く、凄く高級にも見えて来ます。従来の外材の卒塔婆に比べ3~5割程度軽く、持ち運びも楽になります。
表面は、超仕上げで磨き上げていますので、触ると金属の表面の様につるつるしています。艶もあります。高級な筆先を傷めることなく、すらすらと文字を書くこともできます。
また、しよう使用済みの卒塔婆は弊社に送っていただければ、バイオマス燃料や敷材に加工、工場の薪ストーブの燃料など、最後まで木の命を無駄にしません。循環させます。
認証木材は伐採前に必ず事業計画を立て届け出を行い、伐採後再植林を行い森林面積を減らすことのない循環型の森林づくりを行っています。