創業明治十五年 卒塔婆・角塔婆・墓標・経木塔婆 「卒塔婆屋さん」本店

 

この連載企画では、ビジネスの現場で用いられる「フレームワーク」を継続して紹介しています。フレームワークとは、言ってみれば一種の「型」です。

芸事や習い事には昔から型というものがあり、そこには多くの先人たちが工夫し、開発してきた基本のセオリーが凝縮されています。伝統的な武術や舞、楽器の演奏、また歌舞伎やあるいは落語のような話術などにも様々な型が伝承されており、慣れない演者でもそれらの型をなぞり、踏襲することで一定水準の表現ができるように磨き上げられているのです。

「型破り」の発想は、そもそもの型を知らずにはできません。初心者が型を無視して遮二無二突き進むと、それは「型無し」と呼ばれてしまいます。ビジネスの基本の型であるフレームワークを知ることは、物事に対する分析や発想の効率化に効果をもたらします。そして熟練した後は一旦その境地を離れ、さらなる飛躍を促す原動力にもなるものです。

今回は、特に今の時代に求められる「新しい発想、ユニークな着想」をなかば強制的に発案させるための型、SCAMPER法について解説しようと思います。

SCAMPER法とは?

SCAMPERとは、Substitute、Combine、Adapt、Modify、Put to other uses、Eliminate、ReverseまたはRearrangeという英単語の頭文字をつなげたものです。それぞれの英単語は、発想のためのさまざまなアプローチ方法を表しています。

もともとは「オズボーンのチェックリスト」という有名な連想法があり、SCAMPERはそれをベースにしてアメリカの創造性開発研究家ボブ・エバールという人が改良して作り上げた「型」です。作られた経緯についてご興味を持たれた方は、インターネット上で検索してみてください。今回は内容の解説に主眼をおきますので、背景については省略させていただきます。


SCAMPERは、物事に相対し発想する際に用いる、7ないし8通りのアプローチです。さらにそのアプローチの角度を変えることで、発想の幅を何倍にも広げることが可能です。
では、実際に一緒にやってみましょう。できれば、大きめのポストイットかカード型の紙、メモ用紙でも構いませんので何か書き込める紙をたくさんと、太字で書きやすい黒の水性サインペンをご用意ください。


今回は、SCAMPERの型を使って「法要の新しいかたち」を発想する演習を行います。
発想の壁を突き破る(ブレイクスルーする)ことが目的ですので、「いや、それは現実的ではない」とか「その考えは実情をわかっていない」といった反論が出てきても、ひとまず横に置いていきましょう。むしろ、考えのバリエーションを拡げるために制限を設けず、自由に発想してみてください。


思わぬ発想のタネから、檀家さんや地域の皆さんにお寺をもっと活用していただける具体的なアイデアが生まれるかもしれません。そのときに改めて、今度は現実との整合性をしっかり組み立てる態度が求められます。いまはできるだけたくさんの、新しい発想を生み出すトレーニングをしていきましょう。

SWOTやカスタマージャーニーなど他のフレームで考える際にも、固定観念にとらわれないSCAMPERの発想飛躍は有効に作用します。

「法要」に対するSCAMPERを使ったアプローチ

1.Substitute (転用する、代用する)

いまあるスタンダードな状態を他の異なるシーンに転用したり、何かで代用したりすることで、新たなアイデアが生まれることを期待します。法要というイベントにおいて何かを転用したり、代用したりすることでできそうな新しいアイデアを、用意した紙1枚に1アイデアずつ書きだしてみてください。


下に、俗人たる私が考えた発想の例を記しておきます。以下、他のC、A、M、P、E、Rについても同様に、参考例を読みながらご自分でも紙にアイデアを書いていきましょう。


【発想例】
人をかえてみる…身内や親族の法要ではなく、思い入れのある人物(郷土にゆかりのある歴史上の偉人、文化人、架空の人物など)の年忌法要を請け負ってみる。昔、「あしたのジョー」という漫画の登場人物である力石徹の告別式が行われたことがありましたが、地域おこしイベントの一端になるかもしれません。


ルールをかえてみる…昭和の法要では僧の読経に合わせ、数珠を手に経文を諳んじる古老が一人二人はいたものでした。最近ではそんな人を見かける機会も減っているのではないでしょうか。そこで法要の際に共に読経したい、宗派によっては声明を唱えてみたいという人のために、読経のレッスン体験会を企画してみる。YouTubeで読経教習ビデオ教材を配信する。


形をかえてみる…「スマホ法事」住職は自寺の本堂で読経。参列者は各自自宅か、参加できる場所からリモートで参加。時間の都合がつかない場合は録画で視聴、後日墓参していただく。


〇〇をかえてみる…転用、代用してみる対象を他に考えてみましょう。

2.Combine (結び付ける、組み合わせる)

【発想例】
材料を組み合わせてみる…今日の葬儀や法要では、葬祭会社が遺影だけでなく故人の生前の写真やビデオを編集するケースも増えています。これに家系図作成会社のリソースを組み合わせ、墓石に刻まれた祖先の名前・命日や過去帳の記録と共に、「〇〇家の祖を遡る」オリジナルビデオを作成するのはどうでしょう。節目となる年忌法要に合わせて公開すると喜ばれそうです。


ニーズを組み合わせてみる新時代のお寺ブランディング-02 戦略フレーム研究・SWOT分析で紹介した「偲墓」は、「お墓を持ち運べるようにしたい」というユーザーのニーズと、「墓地用地不足」というお寺側の困りごとを組み合わせて発想された商品でした。この場合、親族が遠隔地に散らばっているので法要もリモートで執り行う方が現実的となります。


商品を組み合わせてみる…岐阜県大垣市の「吉田法衣店」が取り扱う「リボン袈裟」。多様性の時代に、新しいことに取り組む意識を可視化するため、袈裟に社会的なスタンスを表明する「リボン」をデザインしたものです。法要の際に身に着けて、講話の糸口にするのもひとつのアイデアです。


〇〇を組み合わせてみる…組み合わせてみる対象を他に考えてみましょう。

3.Adapt (適応させる)

【発想例】
他の事例を当てはめてみる…お寺で婚活イベントやカフェ、バーを開催する事例をたまに耳にします。意欲的な取り組みも大切ですが、一過性でなく地域の人々に集まっていただく仕掛け作りがもっと必要、とも言われています。

福岡県の株式会社くうるは、日常的な「労働」と「副業(複業)」に注目、普段お寺で使われていないスペースを「コワーキングスペース」として開放する事業を発案しました。コワーキングスペースは、駅コンコースやビルの一室を利用して時間制で使用できる仕事部屋を提供するサービスです。法要では複数の親族や仕事仲間、ご近所の型がお集まりになるので、「こんな利用の仕方があるのか」と思っていただく機会となります。


また埼玉県の光明寺が展開するのは、「お寺マルシェ」。地域コミュニティの中心核であったお寺に、地域おこしイベントの主コンテンツであるマルシェをアダプトさせた事例です。


一つのコンセプトのもとに統合する…福井県永平寺町は、曹洞宗の大本山永平寺のお膝元です。そこで精進料理の考えを反映した「禅のまち永平寺町」の特産品を「SHOJIN」というブランドで統一、認定商品として統一的に消費者に訴求しています。法要の返礼品、記念品として使うこともできます。

4.Modify (修正する)

【発想例】
大きさを変えてみる…仏像や仏画の人気は、時代を超えて衰えることがありません。近年は写経に加えて写仏も盛んになっており、写真集を手元に置く一般の人も増えているようです。ガチャガチャと呼ばれるおもちゃの自動販売機がありますが、そこでは仏像のミニチュアがシリーズ化されています。


個の時代ですので、家に一基設置するメインのお仏壇とは別に、小さくコンパクトな仏壇キットを用意するのも「あり」かもしれません。特に、遠方の学校に通うお子さんなどは居住する部屋も広くないでしょうから、コンパクトに出し入れ可能でお灯明も火を使わず安全に献じられるキットがあると喜ばれそうです。スマホ台とセットにすれば、リモート法要に参加するのにも臨場感が得られます。


場所を変えてみる…法要は故人の自宅や墓前、またはお寺で行われるのが通常です。しかし、亡くなった方の思いが込められた場所でできないか、と考えるご親族もおられるのではないでしょうか。
海、山、公園、テニスコート、野球場、サッカー場、コンサートホール、などなど。そんな場所でできるのか、やって良いものなのか、なかなか言い出せないでいる喪主さん、施主さんがいるような気がします。

5.Put to other uses (ほかの使い道を探す)

【発想例】
対象を変えてみる…日本には昔から針供養、人形供養というものがありました。すべてのものに心や魂がある、と考えるアニミズム的な考えが、日本人の心情と親和するのでしょう。物があふれる一方で、環境保全の重要性が高まっている現代、もう一度この風習を復活させる必要がありそうです。


そこで、法要の対象を人間でないもの、日頃使っていてお世話になっているもの、消費しているもの、ゴミとして捨てるにはしのびないものに変えてみるアイデアです。これらの品々を彼岸にお送りするため、たとえば行政と提携して処理施設へ運ぶ前に読経する機会を定期的に設けます。費用は持ち込み者のご負担、可能であれば行政や企業からの支援を募ります。地域の産業と関係するものであればイベント化の可能性もありそうです。

6.Eliminate (削減する、省略する)

【発想例】
簡略化してみる…時間を短縮してみる…実はこの事案は、お寺でもわりとよく用いられています。たとえば、遠国の巡礼地に行くかわりに、一か所でまとめて数分で回ることができる施設であるとか、経文を唱えたのと同じ効用をもたらすとされるチベットのマニ車もこの範疇でしょう。


法要になかなか参加できない檀家さんに対しては、法要のかわりに週ごとや月命日に回すだけでお参りに代えられる、マニ車のような道具をご用意することはできないでしょうか。


道具や設備をやめてみる…お寺に対し敷居が高い、と感じられる要因のひとつに、「お布施をどのくらいお渡しすればよいのかがわからない」「もしかして高いんじゃないだろうか」という心理的な障壁があります。いっそ、「お布施はいただきません」という宣言をするのはどうでしょうか。代わりにサブスクリプション、つまり会費設定にします。事前支払いの期間に応じて割引があったり、コースごとで受けられるサービスが違ったりと、民間ではさまざまな工夫がなされています。


ルールを排除してみる…LGBTや家族形態の多様化など、以前とは異なる生活の単位が生じる時代になりました。「同じお墓に入る」のは一族の者、同じ宗派に属する者が常識であった頃に比べると、イレギュラーな事態も珍しくなくなっています。現実的にはさまざまな障害がありなかなか難しい問題ですが、古くから設けられているルール・制限をここで一旦考え直してみるのも、現代に対応するひとつのあり方です。

7.Reverse(逆転する)またはRearrange (再編成する)

【発想例】
順序を変えてみる…法要をテーマに逆転してみる、と言えば思い浮かぶのが「生前葬」です。いまだこの世に籍があるにもかかわらず、先に葬儀をとりおこなうこの形式は、芸能人や有名人では時折みかけますが、一般の間ではまだあまり浸透していません。「そんな縁起でもない」と考えるのが、普通の感覚だと思われるからです。


しかし、たとえば重度の障がいをお持ちの子供の親御さんが、自分の元気なうちに後のことを皆さんにお願いしておきたい、と生前葬の参列者に挨拶された例があります。末期のがん患者さんが、自分で皆にお別れを言いたいと開催されたこともあると聞きます。


そこまででないにしても、出家修行はできないが生前に戒名を受けたい、授戒したいというニーズは意外とあるようです。生きているうちに安心を得たいという望みに、答えを用意して差し上げるのも宗教が果たせる役目の一つかもしれません。

ひっくり返してみる…法事・法要が簡略化されてきているのは、何もお墓が遠いからとか、参加者の予定がなかなか合わないから、という理由だけではありません。過去何回か実施して、いまや単なる儀礼と化したイベントであれば別にやらなくてもよいのではないか、各自が心にとめて故人に想いを馳せ、冥福を祈ればそれでよいではないか、との意見もまた一理あるものです。


そもそも法要の目的は、故人の追善供養であったり、懐かしい思い出を共有しつつ成仏を願うことだと思うのですが、学校で教わった乏しい知識を振り返ってみると「ちょっと待てよ。仏教では確か死後は六道輪廻するのではなかったか」「いや、誰でも浄土に行けるんじゃない?」といろいろ疑問がわいてきます。


そこで、年忌法要のタイミングを良い機会としてとらえ、逆に参加者側に「一日仏教修行」をお勧めしてみるのも面白そうです。


精神的な修養に費やす時間を、世俗人は普段なかなかゆっくりと取ることができません。宿坊があるお寺であれば、法要の後で仏教の基本的な教えや自分の心の内面を掘り下げる講話を聞き、写経や写仏、宗派によっては座禅をする。あるいは、仏像の種類や意味、五輪塔や塔婆、宝篋印塔に地蔵、庚申塔などよく目にはするが意味を知らないもの等について学ぶ。夜は精進料理を食べながら故人の思い出を語り合って就寝、翌朝掃除をすませたら本堂で読経を行い、解散する。こんな流れを体験するのは大人になってからはまず体験しないことだと思います。

故人のために行っていた法要というものを一度ひっくり返し、自らを振り返るイベントにしてしまうのは、意外と需要があるのではないでしょうか。言ってみれば「大人の修学旅行」「仏教キャンプ」です。これで改めて祖霊や仏教というものに興味を持ってもらえれば、お寺との距離感も縮まり、お墓参りにくる機会も増えると期待されます。

SCAMPERは発想の強制的装置


さて、かなり強引なアイデアも中にはあったかと思います。発想やアイデア出しの壁を破り、思いもよらぬ考えをひねり出すのはプロのプランナーでもなかなかできないことです。そこを強引になんとかしよう、という目的で設計されたのがこのSCAMPER法ですから、「ちょっと無理があるなあ」と思われるのも当然でしょう。


はじめに既述したように、何か新しい発想をしようという時には、ブレーキをかけずに拡げられるだけ拡げてしまうことをお勧めします。アイデアが出尽くしたら、それを評価する段階で現実との整合性、折り合いを見つけて実現度の高いプランに磨き上げていくわけです。その過程で、最初は予想だにしなかった名案が生まれる可能性もあるのです。


今回、「法事」をテーマにSCAMPERの角度から発想を行っていただきました。テーマを入れ替えて、「お寺の副業」「お賽銭」「後継者の育成」「地域への貢献」などいろいろな活用が可能です。ぜひ手元に残ったアイデアメモを机や床に並べて、一人または複数人でブレインストーミングしてみてください。

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この記事を書いた人

Masahiko Oishi

 

 

プロフィール

CI・ブランディング会社の企画調査室長を経てフリーのライターに。
自社開発のフェアトレード、エシカル商品販売業との2足のワラジ。
小学生の時、自由研究で地元の全寺院を調査。
中学生の時、玉虫厨子に魅せられ仏教美術に目覚める。
高校生の時は郷土研究部部長、大学では民俗学を専攻。

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