創業明治十五年 卒塔婆・角塔婆・墓標・経木塔婆 「卒塔婆屋さん」本店

カスタマージャーニー

事業や経営の状況を整理して把握したり、可視化(流行りの言い方をすると”見える化”)したりする際に、便利に使えるのが「戦略フレームワーク」です。

以前解説した「SWOT分析」はその代表的なものです。戦略フレームの名前は、このSWOTのように分析対象の頭文字をつなげたものが多く、たとえば他にも以下のようなものがあります。

代表的なフレームワークの例

・PEST分析……経営に大きく影響する外部環境要因を、P(Politics:政治的要因)、E(Economy:経済的要因)、S(Society:社会的要因)、T(Technology:技術的要因)の4領域の視点で分析する手法

・3C分析……3つのC(Customer:顧客)、(Company:自社)、(Competitor:競合)の視点から分析する手法

・4P/4C分析……マーケティング戦略の立案に必要な4つのP(Product:製品・サービス)、(Price:価格)、(Place:流通・販売業態)、(Promotion:販売促進策・広報宣伝)の要素群。

Pの視点は企業(発信者)側に立ったものであるのに対し、消費者側、顧客側の視点でとらえる立場を4Cと呼びます。(Customer Value:顧客にとっての価値)、(Cost:顧客が支払うお金や時間などのコスト)、(Convenience:顧客が享受できる利便性)、(Communication:企業と顧客との間のさまざまなコミュニケーション)がその4Cです。

それぞれ戦略フレームとしては古くから使われており、古典と呼ばれることもありますが、基本的な考え方なので現在でも十分活用されています。ただ、本来は企業向けのものであり、非営利組織が用いる場合は市場や商品、競合といったビジネス概念を適宜翻訳して考える必要があります。この「寺コラム」でも、今後解説していく予定ですので、どうぞご参照ください。

比較的新しいフレーム「カスタマージャーニー」

そんな中で、最近よく耳にするようになった新しい考え方に、「カスタマージャーニー」というものがあります。Customer(顧客の)Journey(旅)を意味するその名称から、なんとなく内容が想像つくかもしれません。一言でいえば、「顧客が商品やサービスの存在を知ってから購入を検討し、実際に消費・利用して評価を広めたり、リピートしたり、購入をやめたりする一連の行動変化」のことです。

ネットで「カスタマージャーニー」を画像検索してみましょう。マトリクス状の図表がいくつも現れてくると思います。カスタマージャーニーは近年注目度があがっているため、事例や解説、作成のためのテンプレートなどが多くのサイトによってアップされているのです。

※キャプション:シンプルなカスタマージャーニーMAP

上の図は、検索で表示される多様なカスタマージャーニーの概念図を極力シンプルにし、整理してみた「カスタマージャーニーMAP」です。今回はこれを使って、お寺のマーケティング(という言い方に抵抗や違和感を感じられる方は、檀家さんや世間の人々にお寺をもっと有効活用してもらうための方策、と考えてください)を考えてみることにします。

それでは、はじめにこの図を説明しましょう。上段左上から右に、日本語と英語が並んでいます。これは、人々がある商品やサービスの存在を初めて知ってから、それに対して起こす行動を段階的に並べたものです。この一連の流れのもとになったものが、「AIDMA:アイドマ」という理論です。AIDMAは1920年代にアメリカで生まれ、その後広告の世界などで現在に至るまで使われ続けています。

この理論では、人々は商品やサービスに対して「Attention(認知、注意)→Interest(興味、関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)の順で反応する」とされ、広告やプロモーションは、それに適した形で適切に組み立てることを前提とするものです。

AIDMA理論はその後改良の試みがなされ、多くの人の手でSearch(検索、情報収集)やShare(共有)、Comparison(比較)、Conviction(確信)、Examination(検討)といった新たな段階の概念が追加されました。それらはAISASとかAISCEASなどと呼ばれていますが、それはまた別の機会にお話ししましょう。

図表の縦軸には、「想定されるシーン」や「タッチポイント」、「対象者の行動」など、AIDMAに代表される各段階における、消費者(対象者、ここではお寺を活用してもらいたい人々)の状況を書く欄を設定しています。さて、ここには何を記入するのでしょうか。

一番左側の「認知」を例に説明すると、

想定されるシーン:お寺の存在を知る、気づくシーンやシチュエーション

…お盆やお彼岸に「お墓参りにいかなければ」と思う、年末年始で「除夜の鐘や初参りに行かない?」と誘われる、通りすがりにふと山門横の掲示板に書かれた文字に感心する、地域ミニコミ誌に掲載された境内にある句碑や銘木の記事が目に留まる、等々

タッチポイント(メディア):対象者との接点となるポイント

…門構えの雰囲気、掲示板、新聞、雑誌、ポスター、パンフレット、法話会、法事、墓参、ハイキングや花見などのイベント、墓地や墓石の新設、併設施設への訪問、寺で行われる自主イベント、webサイト、SNS、等々

対象者の行動:タッチポイントと接した際にとる行動

…電話で問い合わせる、メールを送る、イベントに参加を申し込む、とりあえずふらっと寺に入ってみる、住職や事務員と話す、お参りする、観光する、おみくじやお札・お守りを買う、御朱印をもらう、写真を撮る、SNSにレスをつける、SNSで発信する、座禅など何かを体験してみる、手洗いを借りる、宿坊に泊まる、史跡巡りをする、等々

対象者の思考:タッチポイントと接したときに何を考えるか

…値段はどのくらいなのか、無断で入って怒られないか、誰かに話を聞くにはどこへ行けば良いか、写真を撮っても平気か、うちの墓はどこだったっけ?そういえば子供のころよく来たな、ご住職はお元気かな、大きな(小さな)寺だな、仏像はいつ頃のものだろう、このご本尊はなんていう仏様なのかな、ゴミ捨て場はどこかな、駐車場が遠い、等々

対象者の感情の動き

…こんなところにお寺があったのか(気づき)、面白いな、何があるのかな(興味の萌芽)、そう言えば近くにお寺あったな(再発見)、しばらくご無沙汰だがお墓の様子はどうかな(ちょっとした後悔)、子供のころはよく遊んだな(回顧・郷愁の念)、こんな史跡があるのか、こんなイベントやってるのか(驚き)、等々

・※調査データ

上記のようなインサイト(「洞察」と訳されます。広告やマーケティングにおいては消費者を揺り動かす心理条件、というような意味で使われます)の根拠や、類推の手掛かりとなる既存の調査があれば、作成にあたってそれを参照します。よく「調査の裏付けがないカスタマージャーニーは、ただの自己満足に過ぎない」といった解説記事を目にしますが、よほどの大寺院でない限り、檀家さんや訪問客についてはご住職自身がよくご存じだと思います。必要以上に神経質にならず、日常を通じて思ったことや気が付いたことを枠内に記入していけば良いでしょう。

ただ、質の良い調査は思わぬ発見や、これまで見えていなかった事実を明らかにしてくれることがあります。多くのお寺はやっていないことですが、法事やイベントなどの際にアンケートを取ってみるのも、現実を把握するうえで効果があります。その結果を公表したり、声を受けて何かを改善したりすれば、それがまた新たなタッチポイントとなって、対象者の反応を呼ぶ材料にもなります。

段階的に態度を変容していく顧客(カスタマー)の心理的な旅(ジャーニー)

同じように、表の右側に向かって進む「興味・関心」「情報収集」「比較」「検討」「利用・購入」「評価・確信」「共有・拡散」「継続」という各段階に対しても、対象者のインサイトをメモしていきます。

SWOT分析の回でやったように、ポストイットなどを使って考えをまとめていくと便利です。

すべての欄をしっかり埋める必要はありません。いま自分たちのお寺に、対象者とのどんな接点があり、どんなコミュニケーションが考えられるか。どんな方策を立てたら来てもらえる機会が増えるか。それを中心に考えてみてください。

ただ、考えるにあたってあらかじめ来訪者の属性を大きく二つに分けましょう。すなわち既存顧客(=檀家様)と、新規顧客(=その他一般の人々)です。この二つは、お寺とのかかわり方や、接点の数、性質が大きく異なります。混在させずに分けて考える方が、整理しやすくなります。

もうひとつ、このフレームを活用するには、目的をはっきりさせることが重要です。お寺と対象者との関わり合いを明確にし、意識上にあげるという点で、カスタマージャーニーは作るだけでも意味があるものです。しかし、これは多くの営利企業が陥りやすい落とし穴なのですが、図表が完成するとそれで達成感が満足され、問題が解決したような気になってしまう一面があるのです。
それを防ぐには、「何を目標にカスタマージャーニーを活用するか」を、あらかじめ決めておくことです。たとえば、

・これまで寺とは無縁だった新規の来場者を、月間10人以上増やす

・お墓がある檀家さんのうち、2年以上お話をしていない方に、まず来ていただく

・ご近所のみなさんに気軽に来ていただけるお寺にする

などといった目標です。そこから発想して、

・仏壇や位牌、お墓に関して困りごとを抱えている人々の相談会を毎週開催する

・遠方でお墓参りになかなか来られない檀家さんに、草取りや掃除などの代行サービスを企画する

・遠くの檀家さんに、法事の様子を配信してデジタルで参加してもらうサービスを企画する

・「敷居が高い」イメージを払しょくする

・現世的なケアだけでなく、伝統宗教として精神面でのケアを行う

・ペットの供養など、新事業の種を発掘する

・地域交流や学校教育、社会教育の場として寺域を開放する

といった、やや抽象的な課題や、具体的な企画案が導き出されたら、どうやってそれを実現するか、をイメージしながらカスタマージャーニーMAPを作っていってください。

目的達成の度合を検証する

タッチポイントでの訴求がうまく顧客(対象者)とマッチングすれば、競合する選択肢を抑えて「利用・購入」に至ります。お寺でいえば、新規の来院や法事のご依頼、墓地の購入などになります。従来のマーケティングではここでCVJ(コンバージョン:成約)が完結して成功、ということになるのですが、カスタマージャーニーではこの後も重要になります。つまり、カスタマージャーニーMAPの後半部分(図表の右側「利用・購入」以降)、「評価・確信」「共有・拡散」「継続」の段階です。

皆さんも、商品やサービスを購入して「思ってたより良かったな」とか、「今一つだな」などと思うことがあると思います。人は誰しも自分の選択が間違っていた、とは思いたくありません。選択の結果として「この買い物は正しかった」「このお寺に来てよかった」という評価がなされれば、それは選択に対する確信に変わります。そして知り合いや周囲の人に「あそこ行ってみたらよかったよ」と、頼まなくても共有・拡散してくれ、自らもリピーターになってくれるのです。

逆に、不満や期待外れの想いをさせてしまうと、「もう二度と来ない」「再利用はしない」と決めるだけでなく、「なんだか感じがよくない」「やめたほうがいい」と周囲にマイナスの評判を広めてしまう危険性も生じます。
最初に定めた、
・これまで寺とは無縁だった新規の来場者を、月間10人以上増やす

・お墓がある檀家さんのうち、2年以上お話をしていない方に、まず来ていただく

・ご近所のみなさんに気軽に来ていただけるお寺にする

という目的・目標が、カスタマージャーニーをもとに構築した施策で達成できたか、達成できたとすればどの程度か、達成できなかったのならその原因は何なのか、検証することでさらにカスタマージャーニーMAPを精緻なものにすることができます。

お寺を離れれば、現代では皆さんも一人の生活者、消費者です。自分がお買い物をしたりサービスを選んだりする際に、どんな手順、どんな視点で判断するのかを思い起こしてみましょう。そしてそれを自分のお寺に当てはめてみて、一度カスタマージャーニーとしてじっくり考えてみることをお勧めします。

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この記事を書いた人

Masahiko Oishi

プロフィール

CI・ブランディング会社の企画調査室長を経てフリーのライターに。
自社開発のフェアトレード、エシカル商品販売業との2足のワラジ。
小学生の時、自由研究で地元の全寺院を調査。
中学生の時、玉虫厨子に魅せられ仏教美術に目覚める。
高校生の時は郷土研究部部長、大学では民俗学を専攻。

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