【2022年最新版】隣のお寺はどうしてる?お寺の代替わりの現状と課題
どのお寺にも必ず訪れるのが、代替わりの問題です。
スムーズにいくこともあれば、大きな騒動に発展してしまう場合もあると聞きます。当方のお寺では舅が住職を務めておりますが、最近はいずれ来る代替わりのことが話題に上ることも多くなってきました。
今回は代替わりをテーマに、現代のお寺が抱える課題についてお話いたします。
目次
「長男が継ぐ」が一般的な代替わりの方法
お寺の代替わりは、父から息子へなされるのが普通です。住職の長男が僧階を取り、院代や副住職を経て代替わりするのがよくある流れかと思います。当方のお寺でも、長男の夫がいずれ住職の職を譲り受ける予定です。
とはいえ、お寺を継ぐのは長男ばかりではありません。次男以降の兄弟が継ぐ場合もありますし、娘さんが婿を取る場合もあります。わたしの身近でも、親の代を飛ばして孫である友人が住職になりました。独身を貫かれたご住職が、甥を跡継ぎにしたという話も聞いています。
多くのお寺では、まずは住職の身内から跡継ぎを探しているようです。
外部から僧侶を呼ぶこともある
身内から跡継ぎが出なかった場合には、外から僧侶を呼んでお寺を継承させることもあります。珍しいことではありますが、在家から僧侶になった人が、跡継ぎのいない寺の後継者となるケースもあるそうです。
ただし「住職」とは、書いて字のごとくお寺に住んで守ることを務めとする者です。跡を継いだ方が身内でないとなると、それまでお寺に住んでいた寺族はそこを離れなくてはなりません。
代替わりは先代が亡くなった時に行われることも多いものですから、これは遺されたご家族の生活にも関わる問題です。そういったことからも、できるだけ身内から後継者を出したいという動きが強いのでしょう。
僧階が足りなければ住職にはなれない
僧侶は仏道について日々学び、檀家さんの期待に応える姿勢が大切です。しかし、住職になるにはそれだけでは足りません。お寺の規模にふさわしい僧階を持っていなければ、いくら立派な僧侶でも後継者にはなれないのです。
僧階を取るには本山で修行したり、大学で学んだりする必要があります。自坊を継ぐための僧階が取れずに山を降り、高齢になっても代替わりができないままでいる僧侶もいます。さらに密教の場合は、宗派の僧階のほかに潅頂 (かんじょう) を授からなくてはなりません。
必要な資格はお寺の規模や宗派によっても違いますが、まずは相応の修行を積まないと、住職にはなれないのです。
住職になるには総代会の承諾が必須
後継者にふさわしい人が見つかっても、お寺の一存で代替わりはできません。まずは総代会で、新しい住職が承認される必要があります。
お寺で育ち、檀家さんにも可愛がっていただいてきた息子や娘の婿であれば、それほど大きな反対を受けることは少ないでしょう。しかし、それまで自坊に関わっていなかったり、他所から呼んで来た僧侶だったりすると、檀家さんの中には抵抗を感じる方もいらっしゃいます。
檀家さんあってのお寺です。総代会で認められなければ、代替わりはできません。跡継ぎを兄とするか弟とするかで、総代会が二分する騒動になったお寺もあります。
たとえ住職の実子であっても、檀家さんに認めていただいて初めて、晋山式 (しんざんしき) を迎えることができるのです。
お寺の代替わりは「後継者不足」が課題
代替わりには、現代ならではの課題もあります。少子高齢化などの影響で、そもそも跡継ぎがいないお寺が増えてきているのです。
規模の小さいお寺では、専業で生活できるほどの収入がないところもあります。そうした寺には、なかなか若い担い手が集まりません。跡継ぎが絶えたお寺は、他のお寺と兼任で住職が就く場合もあります。そうなると住職の席がひとつなくなりますから、在家から僧侶を目指す人にとっては就職先が減ることにもなります。
最近は求人サイトや、若い僧侶と跡継ぎのいないお寺をマッチングするサービスを利用するお寺もあるそうです。
また、お坊さん専用の結婚相談所も見かけるようになりました。宗派として、後継者や伴侶を探すための事業を展開しているところもあります。
お寺の世界では伝統を守ることは大切なことです。その一方で、時代にあわせてやり方を変えていくことも必要になってきているのです。
新しい代替わりは「現代的システム」と「伝統の融合」が鍵
帝国バンクの調査では、2021年、全国の後継者不在率は61.5%となりました。これは前年度の65.1%から3.6ptの減少です。後継者不在率は4年連続で減少し、2021年は過去最低の数字となりました。
後継者の属性としては「子供」が38.5%ともっとも高くなりましたが、前年度と比べると割合が減少しています。子供を継承者とする割合が全体の4割を下回ったのは、調査開始以来初めてです。
代わりに存在感を増しているのが、血縁に寄らない「内部昇格」や第三者を代表に迎える「外部招聘」などです。同調査では、事業継承は脱ファミリーの傾向を強めていることが報告されました。
前述のとおり、お寺の継承に関しては身内から後継者を出す伝統が根強く残っています。それには住居などの事情もあるのですが、選択肢のひとつとして第三者への代替わりが広まれば、お寺にも若い僧侶にも大きなメリットがあるはずです。
とはいえ、見知らぬ僧侶が菩提寺の僧侶になることを嫌がる檀家さんがいるのも自然なことです。代替わりが原因で檀家さんとのつながりが弱くなるようなことは避けなくてはなりません。
理想は、檀家さんとお寺との交流の中で、自然と新しい後継者が馴染んでいくことです。現代的なマッチングのシステムと伝統的なふれあいを上手に組み合わせて、新しい代替わりの形を、誰もが納得できる形に築き上げていくことが重要になってきます。
まとめ
代替わりは、まさに一世一代の大事業です。代替わりがうまくいくかどうかで、その後の寺の運営にも差が出ます。
新しいことを檀家さんに受け入れてもらうには、少しずつ、丁寧に歩み寄る必要があります。すでに後継者がいるお寺も、そうでないお寺も、なるべく早い段階から代替わりについて話し合っておきましょう。
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この記事を書いた人
小春
プロフィーロ
仏教系大学を卒業後、関東のお寺に嫁ぎました。夫の留学やわたしの就職を経て、現在は夫と2人の子供とともに主に東京で生活しています。
夫は舅が住職を務める寺に僧侶として在籍し、わたしもお寺の行事で檀家さん向けのイベントなどを任されることがあります。周りのお寺関係者からいろいろ学びながら、少しずつ寺嫁としての研鑽を積んでいるところです。