創業明治十五年 卒塔婆・角塔婆・墓標・経木塔婆 「卒塔婆屋さん」本店

お墓に立てる木製の塔婆(卒塔婆)は、年忌法要やお盆・彼岸などご先祖供養の際に欠かせない存在です。しかし、供養を終えた後の古い塔婆の処分や管理は、環境面や寺院の労力の点で大きな課題となっています。本記事では、日本各地の寺院で進められている塔婆処理に関する様々な新しい取り組みを、実例を交えながら紹介します。伝統を尊重しつつも環境への配慮や業務効率化を図る工夫の数々は、檀家や関係者にとっても興味深いものです。

古い塔婆を墓に残さない工夫 ~事前回収・管理の仕組み~

通常、新しい塔婆を立てる際には、古い塔婆を寺院側が回収してくれるのが一般的です。例えば〇回忌の法要で新塔婆をお願いした際、古い塔婆はその場でお寺が引き取るので、お墓に古塔婆が溜まりっぱなしになる心配はありません。このように**「新旧交代」で塔婆を管理する仕組み**が広く行われており、檀家の負担軽減と墓地の美観維持につながっています。

一方、法要と法要の間に長期間放置された塔婆は風雨で朽ちたり周囲に倒れたりする恐れがあります。そのため、寺院側で定期的に古塔婆を回収・整理する取り組みも見られます。なかには、墓地入り口に使用済み塔婆専用の回収箱を設置し、檀家が古くなった塔婆をお墓参り時に自ら抜いて収めてもらう工夫をする例もあります。こうした仕組みにより、墓所内に古塔婆がいつまでも残らないよう事前に回収・管理し、環境整備とトラブル防止に努めているのです。また「○○寺では古い塔婆は一定期間(例:一年)経過したら寺で処分します」といったルールをあらかじめ周知し、必要に応じ寺側で回収することで、檀家が個別に処理に悩まなくて済むよう配慮するお寺もあります。

環境に優しい塔婆へ:再利用・リサイクルと新素材の活用


再利用のために削られた塔婆板の削り屑(大阪の第一木材工芸にて)。古い戒名が書かれた塔婆も、表面を鉋(かんな)で削り落とすことで新品同様の板に再生できる。このような再利用により資源を無駄にせず、寺院のコスト削減にもつながっている。

近年、多くの寺院が古い塔婆の廃棄を「燃やす」から「資源を活かす」方向へと転換しています。背景には、2002年の廃棄物処理法改正で簡易な焼却炉でのお焚き上げが難しくなった事情もあります。そのため、使用済み塔婆を専門業者に回収依頼し、木材チップや燃料などにリサイクルする取り組みが広がっています。例えば首都圏のある業者では、寺院から回収した古塔婆を破砕してパーティクルボード(建材)や木質バイオマス燃料、動物の敷材などに再資源化しています。この業者は2020年時点で販売した塔婆の約10%を回収・リサイクルしていましたが、2025年までに50%に高める目標を掲げているとのこと。こうした努力により、廃棄物削減と森林資源の有効活用が進み、環境への負荷軽減につながっています。

また、古くなった塔婆そのものを削り直して再利用する発想も注目されています。大阪の仏壇メーカー「第一木材工芸」は、自社工場の木工機械を活かして古塔婆の表面を鉋で削り落とし、新たな塔婆板として再生するサービスを開始しました。現在、複数の寺院からこの「塔婆の削り直し」注文が急増しているといいます。実際、専用の機械で1枚の塔婆板を何度も削って使い回すことが可能で、替刃1枚で約1,000本分の塔婆を再生できる製品も市販されています。削り直しによって木材資源の節約と寺院の経費削減を両立するこの取り組みは、「物を大切にする」仏教精神にも適うエコな工夫と言えるでしょう。

さらに素材そのものを環境配慮型に切り替える例もあります。**国産間伐材を使った「エコ塔婆」**はその代表です。これは、輸入木材に頼らず国内の山林で間伐されたヒノキなどを塔婆材に活用する試みで、広島県の日蓮宗寺院を中心に始まり全国に広がりつつあると報じられています。輸送時のCO2削減や森林整備につながることから、「宗派を超えて普及させたい」との声も上がっています。実際、ウクライナ産木材に頼っていた塔婆業界では紛争の影響で国産材への切替えが進んだ経緯もあり、国産材利用は安定供給と環境保全の両面で注目されています。


富士山を背景に立てられた紙製の塔婆「輪廻」。特殊なセルロース素材で作られており、燃やした際のCO2排出量は従来木製塔婆の3分の1に抑えられる。富士市発のエコ素材製品として、地元寺院(日蓮宗代通寺、臨済宗法雲寺)でも採用が始まっている。

新素材の塔婆としては、富士市で開発された紙製塔婆「輪廻(りんね)」も見逃せません。これは木材から生成したセルロースナノファイバー(CNF)を活用した次世代素材の塔婆で、使用後はリサイクル可能な紙製です。処分時にお焚き上げしてもCO2排出量が木製の約3分の1(1本あたり150g→50g)に削減できるエコ塔婆として評価され、2024年には静岡県富士宮市の日蓮宗代通寺や臨済宗法雲寺での採用が始まりました。地域ブランド「富士ブランド」にも認定されたこの紙塔婆は、伝統的な形状・書き心地を保ちつつ環境負荷を大幅に軽減する試みとして、他地域への波及も期待されています。

檀家への丁寧な説明と理解促進の工夫

塔婆の処理方法を巡っては、「古い塔婆を誰がどう処分するのか」について檀家と寺院の間で認識が食い違いトラブルになるケースもあります。そうした問題の多くは、塔婆を建てた後の回収・処分ルールが明確に決められていなかったか、伝達が不足していたことが背景にあると指摘されています。逆に言えば、日頃から寺院と檀家の信頼関係が築かれ、処分方法についてきちんと説明・合意が取れていれば、「法要後○ヶ月でお寺で処分します」等の一言を添えるだけで円滑に進むはずだ、と専門家も述べています。

そのため、各寺院では檀家に十分理解・納得してもらうための工夫に力を入れています。例えば事前に回収方法や処分費用について書面や掲示で周知したり、法要の受付時に口頭で説明するのはもちろん、檀信徒会報やホームページで環境への取り組みを紹介するケースもあります。特にユニークなのが、塔婆供養と環境貢献を直接結びつけて檀家にも「見える化」する取り組みです。

曹洞宗の寺院では、「塔婆1本につき苗木1本を植える」植林支援プロジェクトを展開しているところがあります。例えば神奈川県の龍源寺では、毎年春の施食会(せがき会)で建立する塔婆1本ごとにモンゴルの荒れ地へ1本の植樹を行い、証明として各塔婆の裏に緑色の「エコシール」を貼付しています。檀家からお預かりした塔婆供養料の一部を植林費用に充て、「皆さまの塔婆で森づくりに参加しています」というメッセージを伝えているのです。実際に**「一本の塔婆で一本の苗木が育つ」というスローガンのポスターを掲示したり、毎年何本植林したかを報告することで、檀家にも喜びと協力意識が生まれているようです。このように供養が社会貢献にも直結する取り組み**は、「塔婆供養=ご先祖供養+地域・地球への供養」という新たな価値を檀家に提案するものとして、高い理解と支持を得ています。

さらに、お寺によっては環境問題をテーマにしたイベントや勉強会を開き、塔婆処理の現状やリサイクルの必要性を檀家と一緒に考える機会を設ける例もあります。東京のあるネットワークでは、「お寺と100年後の未来を考える」という連続講座で塔婆に使う木材の話題を取り上げ、身近なお寺から森林保護を考える試みも行われました。こうした対話の場づくりによって、檀家自身が主体的に取り組みを理解し協力できる土壌が育まれています。

寺院運営の効率化・コスト削減へのメリット

塔婆の処理方法を工夫することは、檀家のためだけでなく寺院自身の業務負担軽減や経費削減にもつながります。従来、境内で塔婆を燃やして処分していたお寺では、法規制強化に伴い焼却炉の維持管理が難しくなり、代替手段の模索が必要となりました。リサイクル業者への委託は一見コストが掛かるように思えますが、専門業者が寺院を巡回して塔婆をまとめて回収・処理してくれるため、各寺で焼却設備を備えたり個別に廃棄物処理業者と契約したりする手間が省ける利点があります。

実際、多くの塔婆製造業者は納品時に古塔婆を無料サービスで引き取るケースが増えており、その処分費用はあらかじめ塔婆代や配達料に含める形で提供されています。寺院側に追加負担が発生しないこの仕組みは、「古い塔婆をどうしよう」と悩む必要がなく非常に合理的です。さらに最近では、寺院清掃の専門業者が境内清掃と併せて古塔婆の回収処理も一括対応してくれるサービスもあります。そのおかげで、お寺はまとめて依頼するだけで済み便利だと好評です。回収業者にとっても、一度に多くの塔婆を収集できれば効率が良く、処理コスト削減につながるため双方にメリットがあります。

一方、塔婆の再利用(リユース)は材料費の節約に直結します。前述の削り直しサービスを利用すれば、新品塔婆を大量に購入するより安価に済む可能性があります。実例として、大阪のある寺院では不要になった長尺塔婆を削って短い塔婆に作り直し、新たに買い足さずに済ませているケースもあるようです(寸法が合えば字を書き換えて再奉納が可能)。また、エコ塔婆や紙塔婆についても、長期的に見れば輸送コストの低減や廃棄費用の縮減といった効果が期待できます。例えば紙製塔婆「輪廻」は非常に軽量で嵩張らないため、大量輸送時のコスト削減や保管スペースの節約につながるとされています。

さらに、古塔婆を境内に放置しない取り組みは、寺院職員や世話役が定期的に墓地を巡回して撤去する手間を省く効果もあります。回収箱方式では檀家自身が整理してくれるため、雑然と乱立した塔婆を片付ける負担が減ります。墓域が常に整然としていれば景観維持管理のコストも抑えられ、檀家からの信頼向上にも寄与するでしょう。

おわりに:伝統を守り、未来へつなぐために

以上、全国の寺院で実践されている塔婆処理に関する様々な取り組みを紹介しました。古い塔婆を適切に回収・処分するルール作り、リサイクル・再利用やエコ素材の活用、そして檀家への丁寧な説明と協力の呼びかけ――これらはいずれも、ご先祖供養の伝統を大切にしながら現代社会の課題に対応する知恵です。環境への意識が高まる中、塔婆供養を通じて森林保護や資源循環に貢献できれば、檀家にとっても誇らしいことでしょう。また、寺院側にとっても業務効率化やコスト削減という実利が生まれ、結果的に次の世代へ信仰と寺院を受け継ぐ力になると期待できます。

各寺院の状況により取り組み方は様々ですが、大切なのは寺と檀家が協力してより良い方法を模索する姿勢です。お墓に手を合わせる心をそのままに、塔婆のその後にも思いを馳せる――そんな意識が広がれば、お寺と檀家の絆も一層深まるに違いありません。皆さんの身近なお寺でも、ぜひこうした取り組みについて話し合い、支えていければと思います。

参考文献・情報ソース(寺院の取り組み事例や専門サイトより):など

塔婆板再生・超仕上カンナ 替刃2本付き(51135-36) – 寺の友社

寺田寺社管理 

龍源寺 | 卒塔婆供養で植林支援

塔婆を出す人は誰?塔婆はどんな時に立てるのかも解説

「伝統文化」のサプライチェーンを考える――宮島しゃもじからウクライナの卒塔婆まで:徳永勇樹 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト

「お寺と100年後の未来」第2回:お寺で考える遠くの森と近くの山|ボランティア・市民活動の総合情報サイト「ボラ市民ウェブ」


この記事を書いた人

DAISUKE YAJI 

プロフィール

1999年3月  筑波大学第一学群自然学類数学科卒業
1999年4月  株式会社セブン&アイHD入社
2011年10月 株式会社セブン&アイHD退社
2011年11月 有限会社谷治新太郎商店入社
2012年12月 有限会社谷治新太郎商店代表取締役就任
2019年    カラーミーショップ大賞2019にて地域賞(東京都)
2020年    カラーミーショップ大賞2020にて優秀賞
2023年   ネットショップグランプリにて特別賞授賞
2024年   次世代コマース大賞にて大賞授賞
義父・義母・妻・長男・長女・次女・猫3匹の大所帯
趣味はゴルフ、月1回はラウンドしています。

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