超詳しい護摩札のおはなし~その8~護摩札の返納の仕方

これまで連載でお届けしてきた「超詳しい護摩札のおはなし」。 最終回となる第7回目は、役目を終えた「護摩札の正しい返納の仕方とお焚き上げのタイミング」、そして願いが叶った際の「御礼参りや、喪中の際のお参りに関する注意点」について詳しく解説します。

お護摩祈祷でいただいたお札は、長期間お祀りしているうちに少しずつその力が薄れ、周囲の悪い気を受けやすくなると言われています。お札を粗末に扱わず、感謝の気持ちを込めて神聖に天へと還すための一連の作法をおさらいし、この連載の締めくくりといたしましょう。

この記事を読めば、以下のことが分かります。

  • 護摩札を返納する最適なタイミング(1年という目安や節目)
  • 願いが成就した際に行うべき「御礼参り」の作法と感謝の重要性
  • お寺に返納された護摩札が受ける「撥遣(はっけん:御霊抜き)」とお焚き上げの仕組み
  • 「喪中にお寺へお参りしてもいいの?」という疑問に対する密教の正しい見解

1.護摩札を返納する適切なタイミング

新しい護摩札に交換しなければならない厳格な期日はありませんが、お札に宿ったお不動様の御加護の力は「およそ1年間」が目安とされています。そのため、年に1回お寺を参拝し、古いお札を納めて新しいお札をお受けするのが理想的です。

1. 初詣のタイミングで新旧を入れ替える

最も一般的なのは、毎年の初詣の際、前年のお札を境内の「古札納所(納札所)」に納め、新年の厄除けや抱負を込めて新たな護摩札をいただく方法です。多くの寺院では元旦に盛大な護摩祈祷(元朝護摩など)が行われるため、1年のスタートに最適です。

2. 縁日や節目ごとに参拝する

熱心な参拝者の中には、初詣だけでなく「正五九詣り(しょうごくまいり:1月・5月・9月の参拝)」や秋詣、お寺の祭礼や毎月の縁日(不動明王であれば毎月28日)など、季節の節目ごとに古いお札を納め、新たな護摩札をいただく方も多くいらっしゃいます。

2.願いが成就したときの「御礼参り」の作法

受験合格、就職活動の成功、病気平癒、商売繁盛など、お不動様への祈願や目標が見事に達成されたときは、1年の期限を待たず、速やかに「御礼参り」へと伺うのが正しい礼儀です。

感謝を伝える「報告」の重要性

私たちの日常生活でも、誰かに頼み事をして、それを叶えてもらったときは「ありがとう」と感謝を伝えますよね。もし相手が何も言わずに当然のような顔をしていたら、寂しい気持ちになるものです。それは神仏に対しても同じです。

護摩祈祷を積極的に行っている成田山川越別院などの高名な寺院でも、「願い事が成就したときは必ず成田山へ参詣し、お不動様へ成就の報告と深い感謝をお伝えください」と推奨されています。お札をいただいた時のご加護を振り返り、境内の納札所へ古いお札を納め、改めて感謝の祈祷をお受けしましょう。

3.返納された護摩札はその後どうなるのか?

お寺の納札所に返納された護摩札は、最終的に僧侶たちの手によって「お焚き上げ」され、清らかな炎とともに天へと還されます。

この際、ただ単に木を燃やすのではなく、仏教用語で「撥遣(はっけん)」と呼ばれる極めて重要な儀式が行われます。これは、お札にお迎えしていた仏様や菩薩様の分霊を天上界へとお送りする、いわゆる「御霊抜き(魂抜き)」の作法です。撥遣を経てただの木札へと戻された後、神聖な炎で供養されるため、お札がゴミとして扱われることは絶対にありません。

4.【タブーの誤解】喪中におけるお寺への参拝と護摩祈祷

家族や近親者が亡くなられた「喪中(忌中)」の期間は、お祝い事への参加や神社への参拝を控える習慣があるため、「お寺への参拝や御礼参りも行ってはいけないのでは?」と悩まれる方が非常に多くいらっしゃいます。

しかし、成田山をはじめとする多くの寺院の教えでは、「お寺のお参りに喪中は一切関係ない」と明確に示されています。

密教の炎が「穢れ(けがれ)」を焼き尽くす

神道における「喪」の習慣には「死の穢れや災いを周囲に及ぼさないようにする」という意味合いがありますが、仏教、特に密教においてはお祀りしている不動明王がその燃えさかる大火炎(智慧の炎)をもって、私たちのあらゆる穢れ、罪障、煩悩をすべて焼き払い、清めてくださいます。

つまり、お不動様にお参りすること自体が、最大の「身の清め」となるのです。 むしろ喪中のときこそ、大切な人を失った悲しみを乗り越えるため、また故人様のご供養とご家族の心の安寧のために、積極的にお参りをして新しい護摩札をいただくことが推奨されています。初詣や元旦の護摩祈祷も、喪中を気にする必要は全くありません。

5. まとめ

全7回にわたってお届けしてきた「超詳しい護摩札のおはなし」の連載も、今回でいよいよ最終回となります。

護摩札の歴史や意味、サイズや材質、正しい祀り方から、今回ご紹介したお焚き上げによる返納まで、一連の流れを解説してきました。私自身、この連載にあたり様々な書物や寺院の教えを改めて深く調べる中で、初めて知る背景や仏教の深い慈悲の心に触れることができました。

伝統文化や仏教の行事は、ただなんとなく形式的に行うのではなく、一つひとつの決まり事の背景にある「意味」を知ることで、日々の祈りがより気持ちのこもった豊かなものへと変わっていきます。

ご家庭や会社で1年間毎日見つめられ、最後は撥遣(御霊抜き)を経てお焚き上げされる護摩札。だからこそ、私たち「卒塔婆屋さん」は、その木肌の美しさや乾燥状態、そして長野の職人が一本ずつ手作業で結ぶ「飯田水引」の精度において、一切の妥協を許しません。お寺様を通じて皆様の元へと届く当店の護摩札が、皆様の素晴らしい願いや誓いを支え、最後の一瞬まで美しくお祀りいただける存在であることを心より願っております。

これまで連載をお読みいただき、本当にありがとうございました。これからも皆様の心願が成就いたしますよう、心よりお祈り申し上げます。

6. Q&A

Q:いただいたお寺とは「別の宗派のお寺」や「神社」の古札納所に護摩札を返納しても大丈夫ですか?

A: 基本的には、そのお札をお受けになった(護摩祈祷を行ってもらった)お寺へ直接お返しし、感謝を伝えるのが最も正しい作法です。ただし、遠方への引越しなどの事情でどうしても難しい場合は、同じ宗派のお寺、あるいは同じ「仏教の寺院」の納札所であれば受け付けていただける場合がほとんどです。ただし、神社(神道)の古札納所にお寺のお札を納めることは、神仏分離の観点や撥遣の作法が異なるため厳禁です。必ずお寺(寺院)へお返しください。

Q:お焚き上げや返納にあたって、お寺へ支払う「費用(お布施)」はいくら位が目安ですか?

A: 一般的に、境内に設置されている「古札納所」にお札をお納めする際、近くに置かれているお賽銭箱に、これまで守っていただいた感謝としてお賽銭(数百円〜数千円程度、お札をいただいた金額の1割程度など、お気持ちの額)をお納めするのが一般的です。ただし、年末年始の大規模なお焚き上げ(どんど焼き等)で特別な供養を個別に依頼する場合や、御礼参りで新たに護摩祈祷を申し込む場合は、各寺院様が定める規定の祈願料(3,000円〜など)をお納めください。

この記事を書いた人

DAISUKE YAJI 

谷治大典

代表取締役

プロフィール

1999年3月  筑波大学第一学群自然学類数学科卒業
1999年4月  株式会社セブン&アイHD入社
2011年10月 株式会社セブン&アイHD退社
2011年11月 有限会社谷治新太郎商店入社
2012年12月 有限会社谷治新太郎商店代表取締役就任
2019年    カラーミーショップ大賞2019にて地域賞(東京都)
2020年    カラーミーショップ大賞2020にて優秀賞
2023年   ネットショップグランプリにて特別賞授賞
2024年   次世代コマース大賞にて大賞授賞
義父・義母・妻・長男・長女・次女・猫3匹の大所帯
趣味はゴルフ、月1回はラウンドしています。
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