五重塔はなぜ建てられた?知られざる起源「ストゥーパ」と卒塔婆に受け継がれた仏教の世界観

京都や奈良をはじめ、観光名所となるような大きなお寺で目を引く「五重塔」。その圧倒的な美しさと佇まいに魅了される方は多いと思いますが、ふと「なぜお寺にこれほど高い塔があるのだろう?」「そもそも何のために建てられたのか?」と疑問に思ったことはありませんか?

実は、五重塔のルーツを辿っていくと、私たちが普段お墓参りなどで目にする「卒塔婆(そとうば)」の深い歴史へと繋がっていきます。

こんにちは。「卒塔婆屋さん」代表の谷治です。今回は、知っているようで知らない「五重塔の起源」について、インドから日本へ伝わる形の大変化や、仏教的な意味合いを交えて分かりやすく解説します。これを知れば、次にお寺を訪れた際、五重塔を見る目がガラリと変わるはずです。

この記事を読めば、以下のことが分かります。

  • 五重塔の起源がお釈迦様の「お墓(ストゥーパ)」である理由
  • インドの「日傘」が、なぜ日本で「5層のビル」のような形に進化したのか
  • 五重塔の構造(空・風・火・水・地)と、供養で使う「卒塔婆」の意外な共通点
  • 宗派(真言宗・日蓮宗・浄土真宗など)による、仏塔に対する考え方や祀るものの違い

1.五重塔の起源は「お釈迦様のお墓」だった?

日本には、法隆寺や東寺、興福寺など国宝に指定されている五重塔をはじめ、二層の「多宝塔」や「三重塔」など、さまざまな層の仏塔が存在します。

これらの仏塔のすべての起源は、お釈迦様の遺骨(仏舎利:ぶっしゃり)を埋葬した古代インドの「ストゥーパ(塔)」にあります。

しかし、当時のストゥーパは今のような縦長の塔ではありませんでした。古代インドでは一般的だった、「お饅頭型(半球状)」の墳墓だったのです。

2.「日傘」がアンテナになり、やがて高層建築へ

では、なぜお饅頭型の丸いお墓が、日本ではあのような高層建築になったのでしょうか。鍵を握るのは「日傘」です。

古代インドでは、貴人を強い日差しから守るために日傘を差しかける習慣がありました。お釈迦様を深く敬う人々が、「お釈迦様が暑さをしのげるように」と、お墓のてっぺんに傘状の装飾物(屋根)を取り付けたのです。

最初は墳墓の上にちょこんと立ったアンテナのような小さな傘でした。しかし、仏教がインドから中国、朝鮮半島へと伝わる長い年月の間に形状がドラマチックに変化します。 傘の部分がどんどん大きく重厚になり、中国の楼閣建築と融合することで多層構造の塔へと進化を遂げ、日本に伝わったときには美しい「五重塔」の姿になっていたのです。

3.仏教の世界観を表す「五大」と、卒塔婆のルーツ

日本に伝わった五重塔は、やがて仏教的な宇宙観・世界観を表すものとして解釈されるようになりました。

五重の層は、上から「空(くう)・風(ふう)・火(か)・水(すい)・地(ち)」という、万物を構成する5つの要素(五大)を表しています。

実は、この「空・風・火・水・地」の思想は、私たちがご先祖供養の際に用いる「卒塔婆(板塔婆)」や「五輪塔」のギザギザとした形状の由来そのものです。形は違えど、五重塔も卒塔婆も、ルーツである「ストゥーパ」から枝分かれし、同じ仏教の世界観を表現している兄弟のような存在なのです。

最初から意図して作られたわけではなく、歴史の中で「日傘」から進化し、後から深い意味が解釈されていったプロセスは非常に興味深いところです。

「お釈迦様のお墓」が起源であるならば、五重塔の中にはお釈迦様の遺骨(仏舎利)が納められているのでしょうか。

4. 塔の中には何が納められているのか?

結論から言うと、世界中のすべての塔にお釈迦様の本物の遺骨を納めることは不可能です。そのため、多くの場合は代用品として、貴金属や水晶、動物の骨などが納められてきました。

また、宗派によって塔の捉え方や納めるものにも違いがあります。

  • 真言宗(仁和寺など): 大日如来と四方を守る四方仏を祀る
  • 日蓮宗: 法華経の教えに基づき、多宝如来を敬うための仏像や経典を納入する
  • 浄土真宗: 阿弥陀如来のみへの信仰を旨とするため、原則として釈迦由来の仏塔を建てない

このように、宗派の教えによっても仏塔の役割は一様ではありません。

4. まとめ

普段、私たちが何気なく眺めている美しい五重塔。その背景には、「お釈迦様を暑さから守りたい」という古代インドの人々の素朴な優しさ(日傘)から始まり、数千キロの旅を経て日本の伝統建築へと昇華した壮大な歴史がありました。

そして、その精神と世界観は、現代の私たちが日常のお墓参りで手にする「卒塔婆」にもしっかりと息づいています。

次に五重塔やお寺の境内を見上げる際は、ぜひその長い歴史の旅路と、足元にある卒塔婆との繋がりに想いを馳せてみてください。お寺巡りが一層、深く面白いものになるはずです。

5. 五重塔に関するよくある質問

Q:五重塔と三重塔では、宗教的な意味や格の違いがあるのですか?

A: 基本的なルーツや「お釈迦様をお祀りする」という目的、そして「五大(空・風・火・水・地)」を表現している点に格の違いはありません。階層の数は、お寺の規模や建築当時の予算、または宗派の建築様式(意匠)による選択の違いが大きいです。

Q:なぜ五重塔は、地震大国である日本で倒壊しにくいと言われているのですか?

A: 五重塔の構造には、現代の高層ビルにも応用されている「制振技術」が使われているためです。中心を貫く「心柱(しんばしら)」が各層の屋根とあえて固定されておらず、地震の揺れを吸収して各層が互い違いに揺れる(スネークダンス現象)ことで、驚異的な耐震性を発揮します。

この記事を書いた人

DAISUKE YAJI 

谷治大典

代表取締役

プロフィール

1999年3月  筑波大学第一学群自然学類数学科卒業
1999年4月  株式会社セブン&アイHD入社
2011年10月 株式会社セブン&アイHD退社
2011年11月 有限会社谷治新太郎商店入社
2012年12月 有限会社谷治新太郎商店代表取締役就任
2019年    カラーミーショップ大賞2019にて地域賞(東京都)
2020年    カラーミーショップ大賞2020にて優秀賞
2023年   ネットショップグランプリにて特別賞授賞
2024年   次世代コマース大賞にて大賞授賞
義父・義母・妻・長男・長女・次女・猫3匹の大所帯
趣味はゴルフ、月1回はラウンドしています。
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