
1. はじめに
「東京のお盆はなぜ7月なの?」「地方の実家と時期が違って戸惑う……」そんな疑問を持ったことはありませんか?全国的には8月にお盆を迎える地域が多い中、東京をはじめとする一部の都市部では7月にお盆の行事が行われます。この記事では、東京のお盆が7月に行われる歴史的な理由や、お盆にまつわる文化、東京ならではの夏の行事について分かりやすく解説します。
2. この記事を読めば、以下のことが分かります。
- 東京のお盆が「7月」で、地方が「8月」になった歴史的・納得の理由
- お盆のルーツである仏教の教えと、きゅうり・なす(精霊馬)に込められた意味
- 靖国神社や築地本願寺など、東京を代表するお盆の行事・三大祭り
3.歴史的背景 – 明治の改暦とお盆の日付の変化
江戸時代まで、日本のお盆は旧暦7月15日を中心に営まれていました。しかし明治5年(1872年)、政府は国際標準に合わせるため、太陰太陽暦から太陽暦(新暦)への改暦を断行します。
この改暦により、暦の上で約1ヶ月のズレが生じ、従来の旧暦7月15日は新暦では梅雨明け前の「7月中旬」となってしまいました。
東京が「7月盆」になった理由
明治政府は太政官布告により「新暦7月15日をお盆とする」という方針を示しました。東京などの都市部では、新しい暦通りに「7月盆(新盆)」へと移行します。これは、東京が当時日本の政治・経済の中心であり、官公庁や企業が新暦の導入に即座に対応したためと考えられます。
地方が「8月盆」になった理由
一方、農村部では新暦の7月はちょうど農繁期(最も忙しい時期)と重なっており、改暦への即時対応が困難でした。そのため、従来の季節感を尊重し、新暦で1ヶ月遅らせた「8月15日(月遅れ盆・旧盆)」をお盆とする地域が多くなりました。
このように明治以降、お盆の日取りは地域によって二分され、東京などでは7月にお盆を行う習慣が根付いたのです。
4.宗教的・文化的要因 – 仏教の教えと民間信仰の融合
お盆は元来、仏教行事としての「盂蘭盆会(うらぼんえ)」に由来します。「盂蘭盆」はサンスクリット語の「ウランバナ(逆さ吊り)」に由来し、餓鬼道で苦しむ霊を救う仏事を指します。
仏教の故事:目連尊者の物語
仏典『仏説盂蘭盆経』によれば、お釈迦様の弟子で神通力第一といわれる目連尊者が、亡き母が餓鬼の世界で苦しんでいるのを見つけました。お釈迦様から「7月15日に僧たちへ供養を施しなさい」と教えを受け、その施しの功徳によって母親は救われたとされています。それ以来、毎年旧暦7月15日が先祖や両親に報恩感謝し、供養を捧げる日となりました。
日本固有の「祖霊信仰」との結びつき
一方、日本には古来より「今の自分があるのはご先祖様のお陰」と先祖に感謝する祖先崇拝の風習がありました。お盆は飛鳥時代に仏教行事として伝わりましたが、やがて日本固有の信仰や農耕儀礼と結びつき、独自の行事へと融合していきました。
「盆と正月が一緒に来たようだ」という表現があるように、お盆は正月と並ぶ一年の大きな節目です。宗派による違いはあれど、「先祖の霊がこの世に戻ってくる」という民間信仰が広く共有されており、多くの家庭で盆棚(精霊棚)を設けて位牌や供物を備えます。
お盆の習俗に込められた意味
お盆期間中の習俗には、仏教的意味合いと民俗的意味合いが混ざり合っています。
- 迎え火・送り火7月13日の夜に門口で「迎え火」を焚いて先祖の霊を自宅に迎え、16日の夜に「送り火」で霊をあの世へ送り出します。これは霊への道しるべであり、滞在中のおもてなしの心を表しています。
- 精霊馬(しょうりょううま)キュウリやナスに棒を挿して馬や牛に見立てる風習です。
- キュウリの馬:先祖の霊が少しでも早くこちら側へ来られるように
- ナスの牛:お土産をたくさん載せて、できるだけゆっくりあの世へ戻れるように
5.地域差と旧盆との比較 – 7月盆と8月盆の分かれた事情
明治以降、お盆の時期は地域によって主に7月と8月に分かれました。
| お盆の種類 | 時期 | 主な地域 |
| 7月盆(新盆・東京盆) | 7月13日〜16日 | 東京、神奈川、静岡、愛知などの一部都市部 |
| 8月盆(月遅れ盆) | 8月13日〜16日 | 日本の大部分の地方(全国的主流) |
| 旧暦盆(旧盆) | 旧暦7月15日前後 | 沖縄県、鹿児島県奄美地方など(毎年日付が変動) |
東京のお盆を特に「新盆(東京盆)」と呼ぶのに対し、全国的に主流の8月のお盆は「旧盆」とも通称されます。
東北や北陸など、一部の都市部を除いた地方で8月盆が定着したのは、新暦7月では気候的にも早すぎたという理由もあります。ただし、同じ東京都内であっても、多摩地域の一部(旧養蚕地帯など)では8月盆を採用している場所もあり、地域の歴史や産業によって例外が存在します。
6.東京におけるお盆行事・祭りと地域の習慣
東京のお盆期間(7月13日〜16日)は、家庭での厳かな供養だけでなく、地域コミュニティ全体で賑やかな祭りが開催されます。特に盆踊りは、戻ってきた精霊を慰め、感謝とともにお見送りするための伝統芸能であり、東京の夏の風物詩となっています。
東京を代表する、お盆にゆかりのある3つの祭りをご紹介します。
1. 靖国神社「みたままつり」(千代田区)
- 開催時期:7月13日〜16日頃
- 約3万灯もの提灯が九段の夜空を美しく彩る、東京有数の慰霊祭です。昭和22年(1947年)に始まった祭りで、東京のお盆の幕開けを告げるイベントとして定着しています。境内では盆踊り、神輿振り、青森のねぶた囃子など、多彩な伝統芸能が催されます。
2. 築地本願寺「納涼盆踊り大会」(中央区)
- 開催時期:7月末〜8月上旬の4日間
- 「日本一美味しい盆踊り」とも称される、都内最大級の盆踊り大会です。築地場外市場の有名店が軒を連ねる屋台が出店し、やぐらの周りに踊りの輪が幾重にも広がる光景は壮観です。
3. 東京高円寺阿波おどり(杉並区)
- 開催時期:8月最終土日
- 昭和32年(1957年)に商店街の町おこしとして始まった、1万人以上の踊り手と100万人の観客が熱狂する大イベントです。阿波踊り自体が「お盆の精霊送り」にルーツを持つため、広い意味で東京の盆文化を象徴するお祭りと言えます。
コラム:花火大会とお盆の関係
7月下旬に開催される「隅田川花火大会」は、もともと「川施餓鬼(かわせがき)」という水辺の精霊供養・鎮魂の行事が起源です。全国的に夏に花火大会が多いのも、お盆の供養の名残だと言われています。
7. まとめ
東京のお盆が7月に行われるのは、明治の改暦に対して、当時の首都・東京が迅速に適応した歴史の名残です。地方の8月盆(月遅れ盆)や沖縄の旧暦盆など、時期に違いはあれど、「先祖を敬い、感謝を伝える」という日本人の心の根底にあるものは共通しています。今年の夏は、それぞれの地域の歴史に思いを馳せながら、お盆を過ごしてみてはいかがでしょうか。
8. Q&A
Q1. 東京に住んでいますが、地方の実家がお盆(8月)の時はどうすればいいですか?
A1. 基本的には、ご実家(お仏壇や先祖のお墓がある場所)の地域のしきたり・時期に合わせるのが一般的です。東京在住だからといって7月に無理に合わせる必要はありません。
Q2. 「新盆(にいぼん・あらぼん)」と、東京の「新盆(しんぼん)」は違うものですか?
A2. 違います。東京の7月盆を指す「新盆(しんぼん)」に対し、人が亡くなって四十九日のあとに初めて迎えるお盆のことは「新盆(にいぼん/あらぼん)」または「初盆(はつぼん)」と呼び、意味が異なります。
Q3. マンション住まいで「迎え火・送り火」ができない場合は?
A3. 集合住宅など安全面で本物の火が扱えない場合は、盆提灯(LED電池式など)に明かりを灯すことで、迎え火・送り火の代わりとすることができます。形よりも「先祖を歓迎する気持ち」が大切です。
この記事を書いた人
DAISUKE YAJI
プロフィール
1999年3月 筑波大学第一学群自然学類数学科卒業
1999年4月 株式会社セブン&アイHD入社
2011年10月 株式会社セブン&アイHD退社
2011年11月 有限会社谷治新太郎商店入社
2012年12月 有限会社谷治新太郎商店代表取締役就任
2019年 カラーミーショップ大賞2019にて地域賞(東京都)
2020年 カラーミーショップ大賞2020にて優秀賞
2023年 ネットショップグランプリにて特別賞授賞
2024年 次世代コマース大賞にて大賞授賞
義父・義母・妻・長男・長女・次女・猫3匹の大所帯
趣味はゴルフ、月1回はラウンドしています。

